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2008年9月15日 (月)

07年10月号 不就学をなくすために

不就学をなくすために

 

外国籍の子どもの不就学、すなわち日本国籍を有しないために教育の義務規定が適用されず、小中学校の就学年齢にありながらいずれの学校へも通っていない状況については、これまで『じんけん(二〇〇七年二月号)』などで述べてきました。

 不就学の状況については、近年まで一部の自治体を除き、その実態がほとんど把握されてきませんでした。そこで文部科学省は「不就学外国人児童生徒支援事業」を創設、平成一七年度から一八年度にかけて一二自治体へ「外国人の子どもの不就学の実態調査を委嘱」し、昨年度には滋賀県も同事業を受託することとなりました。私たちNPOは教育委員会などと連携をとりながら企画立案、調査票や翻訳資料の作成、湖南市における年末年始の戸別訪問調査などに関わってきたわけですが、それらの調査結果が文部科学省からようやく公表されました。

http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/clarinet/003/001/012.htm

 その結果、一二自治体の不就学者数合計一一二人のうち滋賀県が過半数以上(五七人)を占め、滋賀県内における状況が特に深刻であることが浮き彫りとなりました。

私たちNPOは県内のネットワークを広げる中で、就学年齢にある子どもたちが工場で働いていたり、家事手伝いや、きょうだいの世話をしたりしている状況について以前から断片的に把握し、そのことを関係機関に訴えてきたのですが、この状況は現在も何ら変わっていません。

 そこで今号では、どのような経過で不就学が生じるのかについて触れながら、状況改善に向けた具体的方策について述べてみます。

(1)初来日以降、不就学となるケース

 日本で暮らす外国籍住民は居住地の役場で外国人登録を行うこととなっています。就学年齢の子どもがいる場合、外国人登録の後すぐに教育委員会へ行ってもらうよう案内することを原則としている自治体が多いようですが、外国人登録窓口の担当者がそのことを伝え忘れたり、登録者がすぐに教育委員会を訪ねなかったり、登録窓口から教育委員会へ就学年齢の子どものデータが送付されなかったり、教育委員会へデータが送付されてもその後しかるべきフォローがされず、子どもの学習環境が把握されないまま放置されたりということが起きています。

就学状況を把握するために、外国人登録証に就学先の記載を求めてはどうかという意見も外国人集住都市会議などで出されていますが、入国管理は必要最低限に、行政サービスは最大限に、という観点からすると、この提言は必ずしも歓迎すべきものではないと私自身は考えています。むしろ、外国人登録窓口と教育委員会との情報伝達にもれがないような工夫、例えば就学年齢の子どもの場合には外国人登録を行う前に教育委員会の受付を済ませてくるなどの方法を行えばいいのではないかと思います。さらに言えば、子どもが転入(入学)を行う際には、外国人登録は必ずしも必要ではないのです。

 

(2)再来日以降、不就学となるケース

 外国籍の人たちが一時帰国する場合、通常、入国管理局で再入国許可の申請を行います。ところが、再入国許可によって帰国した場合、居住実態がなくても外国人登録は役場でそのままとなっているため、再来日したことを関係機関が知ることは難しく、再来日後、不就学が生じてもそのことを把握することが困難だという問題があります。入国管理局は一人ひとりの出入国事実を把握できる立場にあるのですが、先に述べたように、出入国管理と地域行政とは切り離すことが望ましいため、一時帰国に伴う出入国事実について役場が把握できるような工夫をすることが必要だと思います。例えば、帰国前・帰国後に役場で所定の手続きを行えば税の減免を受けられるようにするといったことです。一時帰国であっても外国人登録は役場にそのまま残っているため、長期間に渡って帰国していた場合、再来日の際に過去に遡って税徴収がなされます。そのため、一~二年間も帰国していれば、再来日後に数十万円の国民健康保険税の請求がされるような場合があります。そこで現在でも役場によって、あるいはケースバイケースで一時帰国の間の税の減免措置が講じられています。一時帰国者にとって、税の減免措置によるメリットは非常に大きいため、ルール化さえできれば一時帰国・再入国の状況を役場が把握し、再入国後の子どもへの対応もとりやすくなるのではないでしょうか。

  

(3)日本国内での転居以降、不就学となるケース

 基本的には、(1)や(2)で述べたと同様、転居先の役場がしかるべき対応をとれば子どもの就学状況についての把握が可能です。しかし、転出したことを役場に届け出ていない場合も少なからずあります。その場合、子どもの外国人登録は旧住所のままとなるので、子どもの就学状況について転出先の関係機関が把握することは非常に困難です。この問題を軽減するためには、保護者の勤め先の協力が不可欠です。外国籍者を雇用する場合は本人やその家族が外国人登録を先に済ませるよう、企業が責任を持って行うこと。このことを徹底することで外国人登録の住所地と実際の居住地とのずれを減らすことができます。なぜなら、新しい勤め先が見つからないうちに転居をすることはあまり考えられないためです。

 また、転居に際しては別の問題点もあります。それは、旧住所地で通っていた地域の小中学校や外国人学校に対して本人や家族がネガティブな印象を持っていた場合、転居をきっかけに不就学となることも考えられるからです。このことについては、(4)や(5)の項目で述べます。

(4)日本で地域の小中学校へ通った後、同じ居住地でありながら不就学となるケース

 これは不登校の状態と似通っています。異なるのは、不登校の場合、学籍はそのまま残り続けるのですが、不就学の場合、学籍そのものがなくなってしまうことです。そのような状態に至るには様々な要因があります。

一つには、授業内容がほとんど理解できないために、本人が学習へのモチベーションを失ってしまうこと。この問題を軽減するには、地域の学校へ入る前の基礎的な日本語学習、転入(入学)後のカリキュラムにおける日本語学習や母語(母国語)を介しての学習サポート、放課後や休暇中の学習サポート、学校と本人やその家族とのコミュニケーション促進などを効果的に行っていけるよう取り組みを行う必要があります。

 もう一つは、いじめにあったり、対人関係がうまくいかなかったりすることで、子ども自身が学校の中での居場所を失ってしまうこと。外国籍の子どもへの支援と言うと本人への学習支援が真っ先に頭に浮かびそうですが、子どもにとって学校の中での孤独感、居場所のなさほどつらいものはありません。これまで教育相談を行ってきた私自身の経験から言っても、対人関係のもつれが不登校や不就学の直接のきっかけとなるケースが多いと言えます。人権教育や国際理解教育の充実、子ども同士のコミュニケーションが促進できるようなカリキュラムづくりも必要ではないでしょうか。

 さらに、中学二~三年生ぐらいの年齢の子どもの場合は、就労がきっかけで不登校や不就学へと至ってしまうこと。中学年齢の子どもを就労させる会社の摘発強化や、その年齢での就労が違法であることの啓発を外国籍住民へ行っていくことも必要ですが、それと同時に、子ども自身の居場所づくりが不可欠です。学校を欠席がちとなっている外国籍の子どもに対するサポートがあまりにも不足しているように思えます。

 また、「ブラジル人学校へ転入する」などと言って学籍を外した後、実際にはそこへ通わず不就学となってしまうケースも見受けられます。そもそも、外国人学校は「各種学校」を除けば、日本の法律で「学校」として認められていません。さらに本国の政府からも認可されていなければ、たとえそこを卒業しても、本国ですら学校を卒業したこととして認められません。そのため、地域の小中学校によっては、学籍をその学校に置きつつ、外国人学校への通学を認めているところもあります。そうすることにより、日本でも本国でも正式に学歴・卒業資格として通用し、進学も容易となるからです。また、地域の小中学校へ学籍を置くことによって、学校を通じての家庭訪問なども可能となり、その後の子どもの教育環境の把握も容易となります。

 

(5)日本で外国人学校へ通った後、不就学となるケース

 これについても、内容については(4)と同様のことが起こっています。日本での生活が長期化している子どもたちにとっては、母国語の理解も難しくなりつつあるでしょうし、必ずしも対人関係がうまくいくとは限りません。しかし外国人学校の場合、子ども同士、子どもと教員、保護者同士、保護者と学校などのコミュニケーションがとりやすいため、自助努力で問題を解決できる環境にあると言えます。むしろ、学校をやめてしまう主たる原因は、経済的理由によるものです。外国人学校は現行法では(各種学校を除けば)私塾扱いなので、公的援助は一切ありません。ゆえに保護者の学費負担は重く、月謝は子ども一人につき四~五万円前後となっています。そのため、親が解雇されることなどをきっかけに学費を支払うことが難しくなり、そのまま不就学となってしまうケースも想定されます。

子どもの教育環境を把握するためには、外国人学校へ通っている子どもの状況について、公的機関が定期的に情報を得る必要があります。外国人学校の関係者の中には、自分たちが子どもの個人情報を公開することに抵抗感を持つ人もいますが、すべての子どもに学習機会を保障するためには、関係機関の情報交換は不可欠です。守られるべきことは子どもの最善の利益なのですから。

 

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