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2008年2月 7日 (木)

06年8月号 国際結婚ってどんなもの?

国際結婚ってどんなもの?

人権研修などで講演を依頼されることが時々あるのですが、講演を終えた後によく尋ねられることが「奥さんとどこで知り合われたのですか?」という質問です。そこで今回は、少しプライベートな内容になりますが、国際結婚について我が家の様子をお話したいと思います。

少し前のことですが、上の子どもが小学校に入る前、私と上の子と二人、公園で遊んでいると、同じように小さい子どもさんを公園へ連れてきていた女性の方が私に声をかけてこられました。うちの子の容姿を見て「日本人」とちょっと違うと思われたからでしょうが、「国際結婚ですよね」と尋ねてこられました。「そうですけど」と答えると、「いいなあ、私も国際結婚したら良かった」と。一瞬にして私の目は点になってしまいました。

巷ではまだまだ、国際結婚を特別なこととして見る傾向があるようです。冒頭の質問に関しても、国の違う人が一緒になる、ということにドラマチックな出会いを期待しておられる方が多いのかもしれませんが、ほとんどの場合はごくありふれた出会いなのではないでしょうか。たまたま相手の人が外国籍の人だったというだけで。

コミュニケーションが難しかった頃

私と妻が出会ったのは、以前、一緒の職場で働いていた時期があったというだけのことです。ブラジルではポルトガル語を使うということすら知らなかった時期に好意を持ったのですから、その点は不思議な気もしますが、人を好きになるという感情はコミュニケーション以前のものなのでしょうね。

ところが、当時は妻も日本語がほとんど話せなかったのでうまく会話ができません。「誰と一緒に日本に来たの?」と尋ねたら、「おじいさん」と言うので、すごい、三世代に渡って来日したんだと思っていたら、実は「おじさん」だったということがずいぶん後になって分かりました。

「ようかいちに引越しする」と言うので、「うちの家から近くなるね」と言っていたら、実は「よっかいち」だったということが後で分かりました。こんな風に会話では誤解が誤解を呼ぶといった感じでした。

それと、うまく言葉で伝えられないもどかしさ。日本の文化に興味を持ってもらえるかと、最初のデートに選んだ場所は「京都国立博物館」だったのですが、これが大失敗。「これは何?」と聞かれて説明してもどうも伝わらない。土器を指差されて「これは、灰皿?」と尋ねられても、「まあ、そんなところ」と適当な返答しかできなくなったのを今でも覚えています。

辞書を引きもってしか会話ができないのですから、喫茶店などでの会話にも長時間を要しました。小さな喫茶店だと「ここは勉強をするところじゃない」などと怒られることもあり、嫌な思いをしたことも幾度かありました。

でもまあ、今から思えばそれもラッキーだったのかもしれません。お互いに日本語とポルトガル語を勉強しなければならない必然性があったわけですから。もし出会った頃に妻が日本語に長けていたり、私がポルトガル語に長けていたりしたら、一つの言語だけでの会話になっていたかもしれません。話しやすい言葉で話す方が時間も短縮できて合理的ですから。

さて、私の妻は日系三世のブラジル人であると同時に、フランス系三世のブラジル人でもあります。いろんな国の人たちの血が混ざるということはブラジルでは普通のことなのです。白人の血が流れているため、赤道にやや近いフォルタレーザという常夏の地域で生まれ育ったにも関わらず肌の色は白いままです。名まえはレア・ハナコ・カルダス・フジタと言います。レア・ハナコが名まえで、カルダス・フジタが姓です。ブラジルでは日本のように名まえ一つ、姓一つと決まっていませんから、このように長いフルネームは当たり前です。カルダスは母方の姓、フジタは父方の姓。日本では結婚すればどちらか一つの姓を選択しなくてはなりませんが、ブラジルではどちらか一つの姓を選んでも、夫婦別姓でも、二つの姓をくっつけて名乗ってもいいことになっていますから、その点は非常に自由度が高いわけです。

ちなみに、フジタのスペルは正しくはFujitaとなるべきなのですが、公証役場でFugitaと誤って登録されてしまったので、それ以来Fugitaのままです。こういうスペルミスは、ブラジルではしょっちゅうです。でもブラジルはラテン気質の国ですから、そんなことで怒る人は少ないのでしょう。

 

来日した当初のカルチャーショック

そんな妻が来日したのは一六歳の時。最初に住んだのは愛知県一宮市でした。ハイテクノロジーの先進国日本というイメージとは異なる暮らしに最初はとまどったといいます。

一番驚いたのは当時暮らしていたアパートのくみとり式トイレ。ブラジルでは見たことがなかったそうです。

それと食文化の違い。ブラジルでは料理を作る時、デザート以外に砂糖を使うことはありません。ブラジル料理の定番とも言える豆料理も、ブラジルでは塩で味付けするのに対し、日本では砂糖で甘く味付けします。お父さんとスーパーに出かけた時も、照り焼きの鶏を指差され「これはおいしそうに見えるけれど絶対買ったらあかんよ。甘くて気持ち悪い味だから」と教えられたといいます。

高野豆腐にもびっくりしたと言います。「日本人はスポンジを食べるのか?」と。

それからスライスされたお肉。「この向こう側が透き通って見えそうなお肉は何? 何のためにこんなお肉があるの?」なんて思ったそうです。

ブラジルにはスライスされたお肉はありません。お肉屋さんへ行っても、ステーキ用の肉を厚めに切るかやや薄めに切るか程度の違いです。私の知り合いに海外転勤でブラジルへ行った人がいますが、今一番ほしいものはお肉を薄くスライスできる機械だと言います。お肉屋さんでスライスするよう頼んでも「これ以上薄く切れない」と言われるので、すきやきに分厚いお肉を入れるしかないためだそうです。  

妻はイカだけはいまだに苦手ですが、生魚がダメというブラジル人も多くいます。以前私がブラジルで入ったお寿司屋さんでは、ネタの魚にすべて火が通してありました。これではお寿司じゃなくて、ご飯にのった焼き魚ですね。でも、生魚を食べる習慣がない国では無理もないのです。

調味料一つにしてもブラジルでは塩かコンソメ風のものぐらいしか使いませんから、味付けもずいぶん違います。

 

結婚後の家庭生活

 妻と付き合いだしてから約五年の歳月が流れ、結婚の日取りも決まりました。結婚前に突然妻がブラジルへ帰国し、再び日本に帰ってきたのはそれから一ヶ月もたった結婚式の数日前でしたが、それでも無事に結婚式を終えることができました。結婚の場所はカトリック教会です。ブラジルではカトリックの人はカトリックの人としか結婚できないそうですが、日本ではカトリックの人が少ないためでしょうか、カトリックでもない私との結婚も神父さんは受け入れてくださいました。

 婚姻届を市役所に出しましたが、妻は「外国人」なので戸籍に入るわけでもなく、役所でも「外国人登録原票」に記載されたままなので、日本人の「住民基本台帳」とは別扱いです。つまり、妻の名まえは独身時と何も変わりませんし、世帯全員の住民票を取ろうと思っても妻の名は出てこないのです(申請すれば備考欄には記載してもらえますが)。楽観的に考えれば、私たちは図らずとも夫婦別姓になったわけですが、何ともおかしな話です。

結婚後の家庭生活はいたって普通です。周りの人からは「奥さんが外国人だと文化の違いがあって大変じゃない?」などと尋ねられることもありますが、逆に「そちらではお連れ合いの方と大変なことはないんですか?」と尋ねると笑ってごまかされる方が多いところをみると、国際結婚だから大変とか、日本人同士だから理解し合えるとかそういうものではなさそうです。

むしろ、夫婦のつきあいは国際結婚の方が楽かもしれません。例えばけんかをした時に日本人同士であれば「ここまで言っているのに何で理解できないの?」といつまでも気持ちが収まらないかもしれませんが、私たちの場合は「文化が違うから仕方がない」と、お互いが自分自身に言い聞かせて心をなだめることができます。

食事については時々ブラジル料理を食べますが、だからと言ってそれが特別なことではなく、皆さんが時々酢豚やスパゲティーなどの外国料理を食べるのと同じような感じだと思います。それでも、今まで知らなかった食べ物に触れられるということはおもしろいことです。地域にあるブラジルショップなどで買った料理雑誌を見たり、料理を紹介するホームページのサイトを見たりすると世界が広がるような気がします。料理を作る時に多用するのは、圧力鍋とミキサー。半分程度の種類の料理は圧力鍋で調理しています。我が家には炊飯器がないので、ご飯を作る時も圧力鍋。シチューやスパゲティーなどでも圧力鍋を使えば短時間でできるので便利です。ミキサーはジュースを作ったり、食材を細かくしたりするのに使います。朝一番に生ジュースというのは、トロピカルな気分です。

結婚してから少し面倒だったのは妻の各種手続き関係でしょうか? 婚姻のために役所へ提出する書類を揃えたり、その後領事館へ婚姻を届けたり、またビザ(在留資格)更新の手続きも。妻は「短期滞在」で来日し、その後「定住者」資格へ切り替え、結婚後は「日本人の配偶者等」、現在は「永住者」へと変わりました。「永住者」になった今はビザの更新が不要となりましたが、それでも海外へ出かける時は事前に「再入国許可」を入国管理局で申請する必要がありますし、渡航国の観光ビザが必要かどうかということを旅行会社から情報を得られないので不便です(その都度、渡航国の在日領事館で問い合わせる必要があります)。

 

一つしか選べない国籍

私たちには二人の子どもがいますが、ブラジルの法律では父か母がブラジル国籍の場合は海外で生まれた場合でも、その子はブラジル国籍を得ることとなります。海外へ出る際には日本人のパスポートとブラジル人のパスポートと両方を持っていかなくてはならない場合もあるので少し注意が必要です。

ちなみに、日本の法律では二〇歳になるまでに国籍を一つ選ばなくてはならないことになっています。その意味では私たちの子どもも将来どちらかの国籍を選ばなくてはならないことになっているのですが、国籍を一つ選択しないといけないというのは問題があります。お父さんの国の国籍かお母さんの国の国籍かを選択しなさいというのは非常に酷な話です。ブラジルの法律では重国籍を認めているので、二〇歳の時に国籍を選択しなさいというのは(日本の法律だけで一方的に裁けるはずもなく)有名無実化しているのですが、法の建て前はいまだに残ったままです。これだけ国際結婚も増えているのだし、制度も国際化に即したものにしてほしいものです。

松井 高 

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