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2008年2月 7日 (木)

06年6月号 釜山への旅で思ったこと

釜山への旅で思ったこと

海外へ出かけることで日本の姿が見える時があります。今回は、家族で出かけた釜山(プサン)旅行を通して思ったことを書いてみます。

韓国文化に興味を持ち始めた頃

 昨年当初は、日本と韓国の緊張感が一気に高まりました。二〇〇五年三月一六日の島根県議会による「竹島の日」の制定に関する条例に対し、韓国内で激しい抗議行動が起こったためです。

 しかしちょうどその頃、マスコミは「韓流(はんりゅう)ブーム」についてもよく取り上げていました。このブームに一役買ったのは二〇〇四年四月から八月にかけてNHKで放送された『冬のソナタ』でしょう。

我が家は韓流ブームにかなり乗り遅れた感じでしたが、「まあ、これだけ世間で騒がれているのだから少しは見ておかないと」と、レンタルビデオ店から初めて『冬のソナタ』を借りてきたのが昨春のことでした。

 ドラマを見て意外だったのは、日本人と韓国人の感情表現が似ていること。例えば、恋人に自分の気持ちを伝えたいけれども自分の気持ちを素直に言葉にできない、相手のことを考えて自分から身をひいてしまう、自分の気持ちを押し殺そうとする、などといったことです。

ちなみに、ブラジルドラマでは、そういった表現はほとんどありません。お互いが主張しあって気持ちが離れたり、逆に激しいやりとりの後にお互いの結びつきが強くなったりというシーンが圧倒的に多いのです。

いずれにせよ、ドラマに共感できるということはそれだけ文化や価値観に共通した部分があるからだと思うのですが、「そういえば自分にも同じようなことがあった」という共感こそが、日本での韓国映画・ドラマのヒット要因ではないでしょうか。

釜山のまちを歩く

 私たちが釜山を訪れたのは今年の三月下旬。大阪港を午後四時に出発したフェリーは、翌日の午前一〇時に釜山港へ到着します。釜山は日本から非常に近い位置にあり、福岡から約二〇〇キロ、対馬からはわずか五〇キロという所に位置しています。そのため、航行のほとんどは瀬戸内海上で過ごすこととなります。

 大阪国際旅客ターミナルは地下鉄中央線終点のコスモスクエア駅近くにあるのですが、「ここが乗り場?」と不安になるほど簡素な造りです。銀行どころか、売店一つありません。乗船の際にも大きな荷物を抱えたまま長いタラップをひたすら上らなければならず、女性や重い荷物を持った人には一苦労です。一方、釜山市は観光客の呼び込みに積極的で、その力の入れ方は港の設備からもうかがえます。船から到着ロビーまでは段差がなく、施設内には両替可能な銀行の他、食堂、軽食店、コンビニ、土産店などもあります。到着出口正面には観光案内所があり、日本語のできるスタッフも常駐しています。

 港を出て徒歩五分くらいで地下鉄中央洞駅に着きます。地下鉄内の案内表示のほとんどは韓国語・中国語・英語の三ヶ国語で表記されていて便利です。また、釜山には地下鉄の路線が三本ありますが、一号線が黄色、二号線が緑色、三号線が茶色と色分けしてあるので、どの路線かが一目で分かるようになっています。それぞれの駅には三桁の番号がついており、一号線の駅は百番台、二号線の駅は二百番台、三号線の駅は三百番台です。例えば、中央洞駅は一一二番なのですが、次の釜山駅は一一三番、その次は一一四番という順になっています。車輌内で次の停車駅を示す電光掲示板にもこの番号が表示されるので、今どのあたりにいるのかと不安になることもありません。

 地下鉄の切符は自動券売機で購入できるのですが、券売機では一万ウォン札(約一二〇〇円)が使えず、千ウォン札(約一二〇円)か小銭しか使えません。そこで私は、ハナロカードというものを購入することにしました。ハナロカードはJRのICOCAカードと同様のICカードで、自動改札機にかざせばスッと通れるというものです。

 自動券売機の横あたりにハナロカード購入(金額追加)用の機械があり、タッチボタン式で英語表示に切り替えられるようになっています。ところがどうもうまくカードの購入ができません。こういう時、手助けしてくれる人がいるのは本当に助かります。どうやらハナロカードを購入する際も一万ウォン札が使えないようです。声をかけてくれたその人が他の通行人に頼んで千ウォン札に両替してくださいました。こんな親切は嬉しいものです。「カムサハムニダ(ありがとう)!」

 中央洞駅から約一五分、初日の宿泊地、西面(ソミョン)へ到着しました。私たちが泊まるホテルはロッテホテルのすぐ近くなので、ロッテホテルを目印にして同ホテル内のロビーを突っ切るのが近道です。ついでに、港の観光案内所で予約してもらった「シティーツアー」のバス乗り場について尋ねました。釜山では外国人旅行客へのサービス充実を図り、大型ホテルでは外国人スタッフの登用や、職員の語学研修を強化しています。そのため、ロッテホテルでも日本語だけで何不自由することはありません。フロントではデパートの受付係のように丁寧に応対してくださるので、私たちもその恩恵にあずからせていただきました。近くに母語で話せるインフォメーションセンターのような場所があるかと思うと、不思議とそれだけで心が落ち着くものです。

 荷物をホテルに預け、昼食に出かけました。とりあえずは本場のキムチチゲとビビンバを食べに行きます。西面のあたりは日本人客が多いためか、日本語のメニューを置いている食堂、レストランも多く、「日本人です」と伝えると日本語メニューを持ってきてくださいます。嬉しいことだと思いません?

 私たちが入ったのは熟成キムチ専門店でしたが、韓国には様々な種類のキムチがあります。白菜の他、大根、キュウリ、ネギなど、全部で二〇〇種類以上あるとも言われています。白菜キムチにしても、発酵させた酸味のあるキムチも現地では好まれているようです。

 お箸とスプーンは金属製。ご飯やスープにはスプーンを、おかずにはお箸を使います。韓国の食事は辛いものが多いという印象を持っている人が多いかもしれませんが、必ずしもそうではありません。プルコギ、のり巻き寿司、サムゲタン、餃子、魚介類の他、ビビンバや焼肉、韓定食の料理の多くも辛くはありません。これだと、日本から子ども連れの家族や辛いものが苦手な人も大丈夫そうです。

 午後からのバスツアーは、一人一万ウォンで主要な観光地をざっと見て回れるというものです。観光地でバスに乗り遅れたらどうしよう、という不安もありましたが、バスが到着する度に運転手さんが紙に大きな字で出発時刻を書いてくださったので助かりました。

 釜山は韓国でソウルに次いで人口が多く、約三七〇万人(韓国の総人口は約四六〇〇万人)がここで暮らしています。滋賀県の総人口の二・五倍以上です。交通渋滞が激しく、時間どおりにバスは進みませんが、それでも様々なまちの風景を見られるおもしろさがあります。

 夜は口の中でとろけるような牛と豚のカルビを食べました。日本では韓国と言えばカルビが有名ですが、現地の人たちはそれほどカルビを食べているわけではないそうです。また牛カルビ(ソカルビ)よりも豚カルビ(テジカルビ)の方が人気なようです。野菜の葉に副菜とお肉をのせ、くるんで食べるのが最高です。

 二日目の朝は有名チェーン店の野菜たっぷりトーストパンを食べました。Isaacというその店は、おもしろいことに日曜日が定休日。経営者がクリスチャンだからだそうです。意外なことに韓国ではキリスト教徒が多く、全人口の四分の一をも占めているのです。

 朝食後はバスに乗って子供大公園へ出かけました。韓国で初めて一般バスに乗るので不安でしたが、バス停を探していると、日本で暮らしていたという年輩の方が声をかけてくださり、どのバスに乗ればいいのか、どこで降りればいいのか、などを丁寧に教えてくださいました。

 釜山の市内バスは、前方から乗り、日本と同様、運転席横の料金入れにお札か小銭を入れ、おつりがある場合は運転手さんがおつりを出してくれます。けれども、千ウォン札(約一二〇円)か小銭しか使えません。私たちは地下鉄の駅で買ったハナロカードを使いました。このカードは、地下鉄だけではなくバスにも使えるという便利なものなのです。運転席の横にある磁気読み取り部分にカードをかざし、「オルン・トゥジャン・ハゴ・オリニ・ハンジャン(大人二枚と子ども一枚)」などと言うとその分の料金がカードから引かれます。

 子供大公園の遊園地で遊んだ後、子供会館(科学博物館と展望台)へ行きました。ここでは日本語はまったく通じませんでしたが、館内では受付におられた係の人がずっと一緒に同行して遊びの説明をしてくださり、展望台へ行きたいと言うと、その場所まで案内してくださいました。言葉は分からなくても、相手を気遣う気持ちは伝わるものです。

 その後二日目の宿泊地、東菜(トンネ)で虚心庁(ホシンチョン)という巨大な温泉に入り、夕食は韓定食にしました。韓国では、どんな料理にも幾つかの小皿料理がついてきます。数多くの小皿料理をつけるのは相手への礼儀だそうですが、韓定食ともなれば一五~三〇種類もの料理が次々と運ばれてきます。

 三日目の午前中はバスを使って太宗台(テジョンデ)という所へ行きました。バス停が分からず困っていると、年輩の方がわざわざバス停まで案内してくださいました。韓国では、道を尋ねると、自分には遠回りになっても分かりやすい場所まで一緒について来てくださることが多いので、本当に助かります。

 午後からは南浦洞(ナンポドン)の散策です。商店や屋台が立ち並ぶ国際市場や魚市場チャガルチは活気にあふれています。トッポッキやホットック、韓国風のり巻きを屋台で食べ、食堂でユムシ(ミミズを大きくしたようなもの?)も食べると、何となく現地の人たちに仲間入りしたような気分です。若い人たちに人気なのはファーストフード店。マクドナルド、ロッテリア、ケンタッキーなどが、まちのあちこちにあります。

 南浦洞あたりはごちゃごちゃとした所ですが、嬉しいのは公衆トイレがどこも非常にきれいなことです。公衆トイレといえども、デパート並のきれいな設備です。ただし、トイレの紙は有料のことも。

 西面で宿泊し、最終日はBEXCOというコンベンションセンターのコミックワールドというイベントを見に行きました。韓国の若い人たち、特に中学から高校生ぐらいの人たちにはマンガが大人気なようです。うちの子はケロロ軍曹のバッチを買い集めていました。この分野での日本の貢献は大きなものです。ホテルでテレビをつけた時も、必ずと言っていいほど、どこかのチャンネルでは日本のアニメを放映していました。

 音楽なども含めて、文化交流レベルでは日本と韓国はずいぶん近くなっているように感じました。その一方で韓国での日本語離れは急速に進んでおり、若い人たちには日本語はまず通じないと思って良さそうです。国と国との関係というのは不思議なものです。

 

おわりに

 靖国神社や「慰安婦」、竹島問題など日本と韓国との間には複雑な問題が多くありますが、だからと言って韓国人が日本人への強い敵対感情を持っているというわけではなさそうです。私たちが出会った人たちは皆、優しく接してくださり、むしろ日本人に対して非常に友好的な印象すら持ちました。自分がよく知らない世界については、私たちは不安感や違和感、拒否感、先入観を抱きがちです。けれども、相手のことを少しでも理解しようとする気持ち、尊重しようという気持ちがあれば、お互いのわだかまりは少しずつ軽減されていくのではないでしょうか。

訪れる人に少しでも気持ちよく過ごしてほしい、地元の人たちのそんな温かさを私たちは今回の釜山旅行で感じることができました。

けれども私たちの国は外国から来る人たちに対して温かく接することができているでしょうか? 今、日本の国会では「外国人」の指紋採取を復活させようとする法改正がすすめられています。

松井 高 

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