毎日新聞 05年5月5日
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/jiken/news/20050505ddm012040143000c.html
備える大地震:
外国人被災者支援 言葉の壁、情報入らず
若い中国人女性が、乳飲み子を抱えてぼうぜんと座り込んでいた。昨年10月24日、新潟県中越地震から一夜明けた川口町の避難所。ボランティアスタッフが中国語で声をかけると、混乱の中で母国語を聞いた女性は、張り詰めていた糸が切れたかのように声を上げて泣き、スタッフにすがりついた。
避難所で中国語を理解できる人はいない。中国人女性は繰り返し襲って来る余震におびえ、パニック状態に陥っていた。被災地をバイクで走り回った長岡市国際交流協会センター長の羽賀友信さん(54)は、中国語が話せるスタッフを呼び、現状説明とアドバイスをした。
「地震はまた起きるの」「この水は飲めるの」。避難所では中国語のほか、ポルトガル語や韓国語など何カ国もの言語が飛び交う。「言葉の壁」は、恐怖と不安を増幅させていた。
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95年の阪神大震災をきっかけに設立されたNPO「多文化共生センター」(大阪市)。理事を務める田村太郎さん(33)らは当時、7カ国語の通訳を集めて外国人被災者の相談に乗り、日本語から翻訳したニュースレターを配布するなどした。
田村さんは経験を基に、「被災者は混乱していて『何が必要か』と聞かれても答えられない。リストを示し、必要なモノを探り出すことが重要だ」と話す。中越地震でも発生3日後には長岡市に駆け付け、同市国際交流協会やボランティアらと一緒に活動した。
活動は組織的だ。あるグループは毎日夜、避難所に外国人を訪ね、必要なモノや情報を聞き出す。別のグループが日中に物資を調達。もう一つのグループは日本語の情報を翻訳し、避難所を回るグループに託した。数日のうちには、円滑に支援を進める仕組みが完成した。
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外国人支援の取り組みは広がりつつあるが、課題も多い。
横浜市国際交流協会は、避難所の掲示に使える「災害時に役立つ外国語の表示シート集」を作成した。「この水は飲むことができます」「一時使用住宅の入居者を募集します」など79種類の情報を、英語や中国語など9カ国語で表示できる。
同協会は「シート集は次善の策。事前に地震時の対応を説明できれば理想だが、市内に住む外国人は約6万8000人に上り、不可能だ」と説明する。
名古屋市では、コミュニティーFM「愛知国際放送」が5カ国語で週1回ずつ、地震対策情報を放送する。しかし、外国人の認知度は分からない。
田村さんは「外国人には国籍ごとのコミュニティーがあり、独自の連絡網を持っている。行政がすべてを担うのは無理で、コミュニティーごとにリーダーを養成し、災害時のまとめ役になってもらうのが良いのでは」と提言する。【篠原成行】(原則として木曜朝刊に掲載)
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◇メモ
今年2月に長岡市で開かれた「新潟県中越大震災復興フォーラム」で発表された同市在住の外国人に対するアンケート結果によると、約20%が「発生当時、必要な情報を得られなかった」と回答。38%が発生当夜を自家用車の中で過ごし、日本人より割合が高いとみられている。約50%が「母国語によるニュースの放送」を希望し、「必要な情報は何か」という問いには、約23%が「余震の可能性や予報の情報」と答えた。
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